怒りに隠れている気持ち
怒りという感情に対して、ポジティブなイメージを持っている方は少ないのではないでしょうか?
私自身、様々な感情がある中で「怒り」という感情は自分で出すのも、受け取るのもとても苦手です。
しかし、数年前一緒に仕事をしていた方から『怒っている人は自分の力では解決できない問題に直面し困っている人だから、怒っている人と対面した時には、その人の困りごとが何なのかということに目を向けるようにしなさい』と教わりました。
この話を聞いて、怒りという感情に対する感じ方が私の中で大きく変わりました。
それ以降、怒りの感情の場面に出くわしたときに感じていたネガティブなイメージが少し軽減され、この人が怒っている原因は何だろう?と考えられることも増えてきました。
また、自分が怒りを出してしまった際には、自分は何に困っていたのだろうか?と振り返ることで自分に対する自己嫌悪を少し減らすことができたこともありました。
ではなぜ怒りの感情にはネガティブなイメージが強く、怒っている人は自分の力では解決できない問題に直面し困っている人となるのでしょうか。
近頃アンガーマネジメントという言葉を耳にすることが多くなりました。アンガーマネジメントでは、怒りの感情について次のように説明されています。
①怒りは攻撃性のある激しい感情
②怒りという感情は必要な感情であり、怒り=悪ではない
③怒りをバネにするように、人を動かすモチベーションとなりうる
④怒りは二次感情である
怒りの感情にはネガティブなイメージが強いというのは、①によるものだと思います。
では、怒っている人は自分の力では解決できない問題に直面し困っている人というのはどうでしょうか。これには④が関係してくるのではないでしょうか。
二次感情とは一次感情(最初に感じる感情)が発生した後に発生する感情のことをいいます。
例えば、約束をやぶられて怒っている人の場合、一次感情は約束をやぶられて悲しいという感情です。そして約束は守るべきという「こうあってほしい」という気持ちが二次感情である怒りとしてあらわれてきます。
この二次感情の様子は、怒りの氷山モデル(図1)としてあらわされることもあります。
海の上に出ている氷山はごくわずかで、その大部分は海中に隠れていているように、表出されている怒りの感情はごく一部分で、その下には不安や困惑、焦り、悲しみなどの様々な感情が隠れているということを表しています。
怒りの氷山モデルにおいて、海中に隠れている感情、すなわち一次感情こそが怒っている人が抱えている、自分では解決できない困りごとなのです。
このようにエネルギーが強く、表に現れやすい「怒り」にだけ目を向けてしまうとお互いにしんどくなってしまう恐れもあります。しかしその下には多くの感情が隠れています。
目の前にいる人、例えばお子さまが泣いて怒っている時、「何に怒っているのだろうか」と立ち止まって見てみるのもいいかもしれませんね。怒りに隠れてしまった感情に目を向けることで、気温に対する不快感、体調不良、自分の思いが届かない…など、自分では解決できない不快感や不安感と戦っている別の姿がみえてくるかもしれません。