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放ナビコラム

気持ちと表情

皆さんは相手が浮かべている表情から気持ちを正確に読み解くことはできますか?

障害がある子の中には表情がうまく表現出来ない子がいます。
大人の経験で表情から気持ちを解釈すると、異なった気持ちを持っている場合があります。

10年ほど前のお話です。

プレイセラピー(遊戯療法)に携わって2、3年経った頃 私は一人の自閉スペクトラム症の男の子に出会いました。
その男の子は小学校低学年で、言葉でコミュニケーションを取ることが難しく、表情もほとんど変わらない子でした。

初めて出会ったときは、どんな遊びが好きかを探るために電車や車の玩具やブロックなど様々なものを提示しました。
男の子は電車の玩具を選び、表情に変化はないものの線路の周りを動き回りなが ら楽しんでいる様子でした。
職員が玩具を手渡ししても嫌がる様子はなく受け取ってくれます。

2回めのプレイセラピーに向けて臨床心理士の先生と相談し、体幹トレーニングにもなるバランスボールを取り入れてみることになりました。
当日、バランスボールを2つ好きな電車の玩具の近くに置いて様子を見ました。
バランスボールには興味を示すことはなく、電車の玩具で遊び続けていました。

3回めのプレイセラピーではバランスボールに興味を持ってもらおうと私自身がバランスボールに乗ってみたり、ポンポン跳ねさせて音を出したりしました。
音が鳴ると気にはなる様子でちらっと見て近くを通ったりしますが、男の子がバランスボールに触れることはありませんでした。
しかし、3回めのプレイセラピーでは少し微笑むような表情になり変化が見られたのです。
少し表情が和らいだように見え、プレイセラピーに慣れてきてくれたのかと嬉しくなりました。

4回めのプレイセラピーの日、男の子はプレイルームに入室することを拒否し、プレイセラピーを受けられなくなってしまいました。
プレイルームに入室できなくなった原因は、バランスボールでした。
風船のように割れて音が鳴るものが苦手とは聞いていましたが、バランスボールは簡単に割れないと思っていた私はバランスボールが苦手な物の対象になるとは思っていませんでした。

男の子は苦手な物が近くにある時に微笑んだような表情になってしまうのです。

気付いてあげられなかったことにとても申し訳なく、反省した出来事として10年たった今でも忘れられません。
この経験から、表情と気持ちはそれぞれの表現の仕方があり、見逃さないようにしなければならないと思います。

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