ディスレクシアについて
ディスレクシアとは、学習障害の中の一つであり知的能力・ 理解能力などに異常がないにもかかわらず、文字の読み書き学習に限定した症状を示すタイプのことを言います。
日本では「発達性読み書き障害」と呼ばれることもあり、学童期になってから発見されることが多いのも特徴です。
ディスレクシアという障害名を知ったきっかけ
私の実体験です。
ある日、私が勤めてていたピアノ教室に、友達とバンドを組んでいてボーカル担当のお洒落な男子高校生が、「好きなバンドの曲を弾き語りしたい!」といらっしゃいました。
「楽譜は読めなくてもいい」「とにかくこの一曲が弾けたらいい!」「みんなの前で演奏したい!」
という熱意のもと1フレーズごとマスターしていく方法がいいかな?と話し合い
私の運指を見て押さえる鍵盤を覚えてもらい「フレーズを歌いながら弾いていこう!」とスタートしました。
2回目のレッスンで、帰宅後の練習で困らないようにとド・レ・ミの階名を音符の上に書くことを勧めたところで
「俺カタカナ苦手で平仮名は読めるけど時間かかるねん、この音符(♪)飛び出して見るのがしんどいねん。読むのとか書くのとかなしでできひんかな。」
と話してくれました。
時間をかければ読めるけどパッと文字を見ると字が躍って見える、携帯の字とかはまだ読みやすい、小中学校の時はとにかく音読とか当てられるのが嫌で、当てられても辿々しく上手く読めず笑われるのも恥ずかしくて…
「でも歌は自慢じゃないけど昔からうまいからボーカルやねん!」とやる気に満ちていました。
その後も、聴音と運指を記憶することで一曲素晴らしく仕上げることができ、弾きたい意欲が持続し就職するまでレッスンに通ってくれました。
チャレンジ精神・諦めない姿勢など彼から多くのことを学びました。
後からお母様に聞くと「ディスレクシア」なんです…とのこと。
でも、息子に合った方法でピアノが弾けるようになってありがとうございます、と。
ディスレクシア
彼の場合、文字が躍って見える・カタカナを読むことが難しい・一文字ずつは読めても文節で読めない、というのもディスレクシアの症状に当たります。
また、他の症状としては
・文字が二重に見える
・文字が動いている
・拗音(きゃ、きゅ、きょのような2文字のカナで表される音)や促音(ラッコの小さいツ)読みが困難
・九九は特定の段が覚えられない、覚えても忘れる
・言葉を聞き間違える(らくだ→だくだ)
・漢字の偏とつくりがひっくり返って見える、書くときもひっくり返る、
などの症状もあるそうです。
ですが、これらは決してすべてディスレクシアの人に当てはまるということではなく、人の数だけ症状は違うそうです。
なので、同じ対応ではなく一人ひとり違う学び方の提案や指導が必要となります。
この生徒さんの場合は、聴覚的な方法・順序立てた方法でピアノの曲をマスターしたのでしょう。
読み書きで困難を感じていた彼ですが、発表会のプログラムの表紙を書けば皆から大絶賛され、クリスマス会の飾り付けも手際よく独特のセンスがある彼は美容師の学校に進み、技術を認められ現在テレビ局やブライダルのメイクの仕事で活躍されています。
このように芸能分野・スポーツ・絵画や制作・音楽などで素晴らしい能力を持ち合わせることも多々あるのも特徴だそうです。
日本の学校では平仮名に始まりカタカナ・漢字があります。平仮名、カタカナは一つの文字に一つの音ですが、漢字には読み方にルールがありません。
読みと書きは学校においてセットであり、困難さは想像できます。
努力しても習得できないと次第に読み書きに関する努力をしなくなるかもしれません。
例えば平仮名カタカナはわかる、漢字は読めるものと読めないものがある、次第に読めない漢字が増えてくる、認識の上で困難が出てくる、となると楽しくない・苦痛・努力しても成功体験が得られないと自己肯定感も持てなくなるかもしれません。
結果、語彙や知識の成長が制限されて残念ながら努力が足りないと誤った認識をされることもあります。
さらには、心身症や不登校など二次障害を引き起こすこともあります。
2012年より子供一人ひとりが違う個性を持つものと捉え、互いの個性や多様性を尊重し合う共存社会を目指したインクルーシブ教育の理念を実現するために、就学前に受けていた支援を小学校でも引き継ぐなどすべての子供が共に学ぶために、個別の支援が必要な場合は適切な個別指導を提供する様になってきました。
大きな升目に補助線があるお稽古帳は、どの部分に書くのかを分かりやすくし平仮名はどの色が一角目に書くか工夫したり、音読しやすいように補助シートを使ったりと今までもたくさんの工夫の中で一人一人に合った学び方が行われています。
現在、文字もユニバーサルデザインの一貫で止めはねのない物を使い、デジタル化が進んでいるため読みやすい文字を選択することができるようになってきました。
読んでいるところが画面上でハイライトされ文章を読みやすくする機能がある電子図書や、書いている文字がその場で同期して読み上げられ確認しながら書くことができるアプリも開発されています。
学校教育においてはデジタル教科書の使用が法律で許可され、コスト面での問題はあるものの少しずつ使用する学校も増えるだろうと予想されています。
生活においてはヘルプカードの提示にて支援の輪も広がっています。
本人を取り巻く環境、ご家族・保育者・学校・福祉・医療機関地域社会全体でディスレクシアの人の困難さが少しでも楽になるよう理解を深め、認め共に生きることができるようにしたいですね。