音楽と社会性の習得
保育・療育現場では1日の中では、シーンに合わせて多くの音楽が用いられています。
朝の場面では、
『どこかでどこかで呼んでいる~♪○○さん!』
「はーい!!」
ピアノに合わせて歌いながら、お名前を呼ばれたら「はーい!」とお返事する歌です。
「はじめ」と「おわり」のきっかけに歌を歌ったり、歌は行動の区切りのタイムキーパーの役割も果たします。
歌を歌う理由には、そのほかにもこんな意味合いを持っています。
・目と目を合わせる
・ピアノと歌(人の声)の中から必要な情報を汲み取る
・コミュニケーションをとる(返事をする、手を挙げるなど)
・複数人いる空間ならば、お名前を呼ばれるまで順番を待つ
・場面に応じた振る舞いをする
ADHD、ASDの特性を持つ児童の中には
・目を合わせるのが苦手
・「はじめ」と「終わり」を理解することが苦手
・集中して話を聞くことが苦手
・人前でお話しするのが苦手
・座って待つことが苦手
など各々の特性を持っています。
名前を呼ばれても返事をしない場合、たくさん聞こえてくる情報の中から必要な音(言葉)を選択することが難しいのかもしれません。
また、返事をしようと思っていても極度に緊張しているのかもしれません。
「名前を呼ばれたけどどうすればいいの?」とどう行動すればよいのか、何をしているのかが分からないのかもしれません。
子どもたちの中には音に対して過敏であったり、鈍感であったり「今」の状況によっても感じ方は様々です。
お名前を呼ぶ際は、子供の視界に入る、子供の手を握る、顔の前で手を振るなど動きをつけることもあります。
「あれ?何か動いた?」
「僕のこと呼んだ?」
と、気付いてもらうことも含め「自分」の存在の確認から始めることもあります。
目と目を合わせるのが苦手な場合は、無理に視界に入ろうとせず手と手でタッチするなどアプローチを変えます。
自身のお名前を呼ばれたら・・・
・相手の方向(顔)を見る
・目線をあわせる
・手を挙げる
・はーい!と声を出して返事をする
など、どれか一つでもできればよし!
座ってお名前を呼ばれるまで待てたらよし!
難しそうならばアプローチの仕方を変えればいいだけで決して「なんでできないの?!」
とは考えません。
無理やりさせるのではなく、あくまで流れの中で自然に行えるようにしていきます。
結果を急がず個々の個性を大切にしながらスモールステップで進め、自身の存在を確認し名前を呼ばれたらアクションすることを習慣化していきます。
最初は全く関心を示さなかった子供が1週間、1か月、1年と続けていく中で
目と目が合う、耳を傾けて集中する、手を挙げるなど子ども各々の方法で行動できるようになっていきます。
歌(音楽)を使うことで社会性の習得にもつながっていきます。
椅子に座って待つことが苦手という場合、特にADHDやASDの子供の中には体感が弱いなどの特性があり、上記の方法ではなかなか習得できないこともあります。
ご家族間においても、何気ないふれあいの中でコミュニケーションの一つとして行うことができます。
その時は焦らず、即結果を求めず、リラックスした中で行いましょう。