APDについて
APD(Auditory Processing Disorder)とは「聴覚情報処理障害」のことです。
初めて聞く方も多いと思いますが、具体的には「聴覚検査で異常がないにも関わらず、聞き取り困難を有する障害」ですが、障害でなく症状と言われることもあります。
まだ日本では確立した定義はなく、発達障害や脳損傷、認知的な偏り、心理的な問題などが背景要因とされています。
成人でAPD症状を引き起こす背景要因の約6割が発達障害と言われています。
近年では診断できる病院も少しずつ増えてきていますが、APDの診断を受けたとしても、その症状だけで障害者手帳をとるのは難しいです。
症状は、人によって違います。
「音の出どころがわからない」 「口頭で言われたことは理解しにくい・忘れやすい」「字幕がないとドラマや漫才を理解するのが難しい」 「電話やインカムなどの機械を通した声が苦手」という方もいます。
最近見かけるオンラインでの会話や集まりも、人によっては苦手に感じます。
またよく聞くのは、ザワザワしたところでの聞き取りの難しさです。
飲み会など騒がしい環境でも自分の名前や関係する言葉、興味のある話題などを様々な音から抜き出して聞き取ることができる「カクテルパーティー効果」が働かない人が多いようです。
他にも聴覚での情報処理の遅さや、人の話に注意が向けられないなどで会話についていけなくなる人もいます。
このように症状はいろいろですし、その程度も人によって様々です。
残念ながら、今のところ聴覚処理障害の医学的な治療法は見つかっていません。
しかし、聴覚処理障害の「聞こえづらさ」を改善するための対処法はいくつかあり、
それらを実践することで症状の軽減や改善が期待できます。
その対処法は主に、環境調整、補助手段の利用、聴覚トレーニング、心理的な支援等がありますが、今回は環境調整について詳しく説明したいと思います。
聴覚処理障害の方は、原因が違っても雑音の中では症状が悪化します。
雑音がなければ聞き取れる人も多いので、雑音を減らす工夫をしましょう。
日常生活では生活音を減少するために椅子やテーブルにカバーを付けたり、家族と話す時はテレビやラジオを消したりすることで雑音を抑えることができます。
また会社や学校などでは、周りの人に「聞こえにくい」ということを理解してもらい、出来る限り協力をお願いすることも大切です。
聴覚処理障害の人に対して周りができること
・大切な話をするときは静かな場所に移動する。
・ゆっくりと大きな声で話す。
・繰り返して話す。
・話しかけるときは肩をたたく。
聴覚処理障害の方が職場や学校にいる場合はその特性を理解し、上記の対応を心がけてお互いが気持ちよく過ごせるようにしましょう。