数ある療育の中で
私が経験した「和太鼓」にまつわる療育のお話をしたいと思います。
私は、高校時代和太鼓部に所属していました。
他校の小中高等学校を始め、特別支援学校・聴・盲学校や老人ホームなどの施設や様々な地域のイベントに多々出演させていただきました。
中でもとても印象に残っているのは、ある学校のイベントで演奏した時のことです。
演奏が始まる数分前まで奇声やざわつく声が響いていましたが、ドーンという大太鼓の重低音の響きとともに一気に静寂に包まれました。
続いて中太鼓、締め太鼓が軽快リズムを打ち始めると最前列にいた男の子が身体を左右に揺らしてリズムをとっていました。
演奏後に分かったのですが、最前列にいた男の子は耳が全く聞こえない聴覚障害児とのことでした。
ほかの楽器は耳の不自由な人には聞こえませんが、和太鼓は体の芯にまで響く力強い振動、鼓動が伝わります。
目の見えない人はその音と響きが伝わります。
演奏後の体験コーナーで、実際に撥を持って生徒さんに太鼓を叩いて頂きました。
太鼓を叩いた時に感じる手、皮膚に伝わってくる振動を通じて生徒さんたちは全身で音楽を感じ、笑顔を見せてくれました。
最近では、「和太鼓療育」が少しずつ広まりつつありますが、しかしながらその認知度や実践の普及、指導者の育成などまだまだ発展途上の段階でもあります。
太鼓は打てば響くシンプルな楽器ですが、その響き(音・振動)は心と体に響き、誰でも打ってみたくなる積極性を引き出してくれます。
最近の研究では「脳を活性化」させる効果も確認され、集団で演奏すればお互いの刺激により楽しさも一層増し、体力・集中力・向上心・協調性が育ちます。
個人差はもちろんありますが、和太鼓と出会って言語や運動などの発達が促されて、受け答えや挨拶、表情や感情の理解をして他者とコミュニケーションをとれるようになったなど、奇跡のような成長を遂げた実践例も数多く報告されています。
私自身、人見知りで内気の引っ込み思案でしたが、和太鼓と出会い積極性が養われそれが自信へとつながっていきました。
実際に現在、放デイに来られているお子さんが和太鼓教室に通われています。
会うたび生き生きした瞳で「今日は和太鼓あるから楽しみ!」と教えてくれます。
集団療育と個別療育どちらがいいのか迷われている保護者の方も多いかと思います。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、どちらが良いかはそのお子様の発達状況によります。
体験レッスンなどを通して、比較検討しながらお子様にあった最適な〇〇療法をみつけてあげてください。