集団精神療法を経験して
私は10年ほど精神科で遊戯療法(遊びを主なコミュニケーション手段、および表現手段として行われる心理療法)に携わってきました。
その中で、中高生向けに行なわれていた「集団精神療法」にも参加する機会がありました。
集団精神療法とは、同じような困り事を抱える方々が集まり、治療者や参加者と話し合うことを通して、問題の改善を図ろうとする精神療法の一種です。
集団精神療法の中では、治療者との一対一の関係だけでなく、他の参加者の方との間の相互作用からも多くの学習効果が得られるとされています。
集団精神療法の経験
集団精神療法は、一般的に10人から20人程度で行います。
治療者・参加者が全員で輪になって座り、40分から50分程度テーマを決めたりせずに自由に話をします。
治療者は精神科医・看護師・公認心理士などです。
遊戯療法で個人に関わっていた私は、治療者として参加しましたはじめての時はとても緊張しました。
参加者の方々は様々な悩み(人間関係・不登校など)を抱えており、私とは比べ物にならないくらいの緊張や不安を感じていたのではないかと思います。
まず、はじめにリーダーである治療者から約束事(話しの内容は外では話さない、話しに参加しなくてもよいなど)の説明があります。
説明が終わると順番に簡単な自己紹介をします。
自己紹介が終わると自由に話す時間なとりますが、治療者からはなかなか話しづらく沈黙の時間が続きました。
しばらくすると何度か参加したことのある参加者が話し始めて盛り上がっていったのですが、話をされないまま時間が終わる方もいらっしゃいました。
二回目に参加した時、前回話をされなかった方は本を出して読み始めました。
話をする場でその行動はよいのかと少し思いましたが、他の参加者が本に興味を持ち話が広がっていきました。
三回目の参加では、いつも控えめに返事をされる参加者が得意の折り紙を取り出し、折り紙がきっかけで話しが弾んでいきました。
何度か参加していくうちに、消極的な方が自分の好きなものや得意なものを持って来ることによって話しのきかっけを作っている姿を見ることができました。
そして、だんだん悩みや不安を話すことができるようになっていました。
集団の中で話をすることが苦手な人は少なくないと思います。
しかし、集団精神療法に参加している方々はそんな自分を変えたいと思って参加したのではないかと思います。
そして、その場所が自分にとって安心で安全であると思えたとき、抱えている不安や悩みを他の参加者にも打ち明け相談することができるようになったのではないかと思います。
集団精神療法に参加して、誰かに話しを聞いてもらうこと、それを受け入れてもらえることはすごく大切なことだと改めて感じました。